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【第85回桜花賞】豪雨を切り裂いた刺客!エンブロイダリー、鮮やかな差し切り勝ちで春の女王に!

【第85回桜花賞】豪雨を切り裂いた刺客!エンブロイダリー、鮮やかな差し切り勝ちで春の女王に!
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レース総括:雨中の女王決戦、エンブロイダリーが差し切り勝ち!

2025年4月13日(日)、阪神競馬場で行われた第85回桜花賞(GⅠ)は、あいにくの雨模様。稍重にまで悪化した芝コースで、牝馬クラシック初戦を制したのは、3番人気に支持されたエンブロイダリーだった。勝ちタイムは1分33秒1。道中は中団で脚を溜め、直線では馬群の外を豪快に伸びて、最後は鋭い差し脚でアルマヴェローチェをクビ差で捉えた。

道中のペースは平均からやや速め。前半800mが46.6秒、上がり3Fは34.5秒と、馬場の影響で差し・追い込み勢に有利な流れとなった。このコンディションで持ち味を発揮したのがエンブロイダリー。終始リズム良く運び、進路取りもスムーズ。鞍上モレイラの好判断も光ったレースだった。

逆に、逃げたエリカエクスプレスや好位勢には厳しい展開。道中脚を使わされた馬たちは直線で余力を失い、なだれ込む形となった。結果として、後方から末脚を使えた馬たちが上位に来る形に。

桜花賞らしい切れ味勝負ではなく、立ち回りと馬場適性が問われたレースとなり、「本当に強い馬」が結果を出したとも言える内容だった。


勝ち馬エンブロイダリー:鋭い末脚と騎手の手腕が光った一戦

エンブロイダリー(牝3、森一誠厩舎)は、父アドマイヤマーズ、母ロッテンマイヤーという血統背景を持つ、ノーザンファーム生産の良血馬。2歳時から安定した走りを見せていたが、この桜花賞でその潜在能力が一気に開花した。

レースではスタートを決めた後、無理に前に出ず、終始9番手付近の中団やや後ろをキープ。脚を溜めつつ、勝負どころの3~4コーナーで外へ持ち出し、直線に入ると進路を確保。そこから一気に加速し、ゴール前で先に抜け出していたアルマヴェローチェを捉える完璧な競馬だった。

モレイラ騎手の好判断も勝因の一つ。3コーナーでは若干の斜行で過怠金処分を受けたが、馬場の状態と他馬の脚色を見極めた上での仕掛けは、さすがの一言。雨の中、重馬場を苦にせず末脚を伸ばせたのは、エンブロイダリー自身の高い適応力と心肺能力の賜物だろう。

この勝利で桜花賞馬の称号を得たエンブロイダリー。今後はオークス(東京芝2400m)という長丁場への挑戦となるが、母系にロベルト系を持ち、距離延長にも十分対応可能な配合。クラシック2冠への期待が高まる一頭だ。

2着アルマヴェローチェ:安定感と成長力、今後の牝馬戦線でも主力級か

2着に入ったのは、2番人気に推されたアルマヴェローチェ(牝3、上村洋行厩舎)。スタート後は中団よりやや後方の11番手付近に構え、直線では馬群を割るように進出。ゴール直前で抜け出すかと思わせる場面も作ったが、最後の最後でエンブロイダリーに交わされ、惜しくもクビ差の2着に。

とはいえ、重馬場にもかかわらず、推定上がり33.9秒という鋭さは評価されるべき。12kgの馬体増も成長の証で、3歳春としては理想的な馬体仕上がりだった。レース内容も申し分なく、勝ちに等しい2着といっても過言ではないだろう。

岩田望来騎手とのコンビネーションも安定しており、今後の牝馬重賞戦線で確実に台頭してくる存在だ。特に広い東京コースへの適性も高く、次走のオークスでは更に注目が集まりそうだ。

3着リンクスティップ:驚異の追い込み、ラストの脚には注目

3着に食い込んだのは、後方18番手から大外一気の末脚を炸裂させたリンクスティップ(牝3、西村真幸厩舎)。スタートはひと息で最後方に置かれる形となったが、道中はじっくりと脚を溜め、直線で満を持して外へ。馬場の悪い最外を通っての追い込みは、観る者を唸らせる迫力だった。

上がりは勝ち馬と同じ34.0秒。これだけ後方から差し届いたのは、展開と馬場がハマった部分もあるが、それ以上にこの馬の素質を感じさせる内容だった。スタミナと瞬発力を兼ね備えたその走りは、オークスのようなタフな条件でより真価を発揮する可能性を秘めている。

デムーロ騎手も「スムーズに運べたらもっと上に来れた」とコメントしており、まだ伸びしろのあるタイプ。今後のローテーションに注目したい一頭だ。

上位入線馬総評:前残り厳しい展開、実力伯仲の戦い

今回の桜花賞は馬場状態も相まって、前傾ラップで進行。先行馬にとっては非常に厳しい流れとなった。実際、逃げたエリカエクスプレス(5着)は最後脚色が鈍り、好位組のショウナンザナドゥやボンヌソワレなども軒並み失速。上位に来たのは中団~後方から脚を伸ばした馬ばかりだった。

それでも、どの馬も持ち味を発揮し、タイム差以上に内容の濃いレースとなった。特に中団からの差し脚で上位に来たエンブロイダリー、アルマヴェローチェ、リンクスティップの3頭は、今後のクラシック戦線でも主役級の存在になることは間違いない。

また、6~10着あたりには、展開や馬場の不利を受けながらも善戦した馬たちがズラリと並んでおり、今後の巻き返しも十分にあり得る。


4着マピュース:器用さ光る走り、距離延長で真価発揮か

9番人気という低評価を覆す走りを見せたのが、4着に食い込んだマピュース(牝3、和田勇介厩舎)だ。スタートはゆったりと出て、道中は中団後ろの12番手あたりを追走。3~4コーナーではインを立ち回り、直線では外に持ち出して伸びを見せた。結果的に2着馬とは0.9秒差ながら、見た目以上に中身の濃い内容だった。

着差こそ広がったが、ラストの脚色は上々で、上がり3Fは34.7秒。今回のような稍重馬場でもしっかり末脚を使えるのは武器だ。田辺騎手もコメントで「この馬場でもバランス良く走れていた」と述べており、馬場適性の高さも印象的だった。

また、血統的には母系にサドラーズウェルズ系のスタミナがあり、むしろ距離が延びるオークスのほうが合ってくる印象を受ける。小回りよりも東京のような広いコースで、馬群を捌きやすい状況下でこそ、この馬の良さが最大限に引き出されるだろう。

展開ひとつで重賞初制覇も見えてくるポテンシャルを秘めた存在であり、次走での動向に注目だ。

5着エリカエクスプレス:逃げの戦術も、馬場と展開に泣いた一戦

1番人気に推されたエリカエクスプレス(牝3、杉山晴紀厩舎)は、スタートから積極的に先手を奪い、道中も自らのリズムで淡々と逃げた。しかし、稍重馬場の中で前半46.6秒という速いペースはやや厳しく、直線半ばで脚色が鈍る形となった。

それでも最後までしぶとく粘り、勝ち馬から1.1秒差の5着。ペースの見極めが難しい中、逃げ馬としては及第点の内容だったといえるだろう。特筆すべきは、直線に入っても大きくバテることなく、一定の脚を保っていた点だ。35.6秒の上がりは、展開を考えればむしろ優秀だ。

今回は前有利な流れにならず、馬場状態も加味するとかなりタフなレースだった。馬体重の増減がなかった点からも、コンディションは万全だったと考えられる。勝ち馬との力差は大きくないと見られ、展開次第では重賞制覇も視野に入ってくる。

また、テンの速さを活かせる小倉や中山などのローカル開催や、開幕週の馬場ではパフォーマンスを上げるタイプ。引き続き注目していきたい存在だ。

6~10着馬の評価:能力を示した馬、展開不利に泣いた馬

以下、6~10着に入った馬たちの中にも、今後の成長が楽しみな素質馬が多くいた。各馬を簡潔に評価してみよう。

チェルビアット(6着)

後方から馬群を捌いて差してきた内容は好感。上がり34.5秒は上位と遜色なく、重馬場適性も高そう。ブリンカー着用が好結果をもたらした可能性あり。

プリムツァール(7着)

最内を通らず、馬群の外から伸びてきた。体重も減っており状態面の不安もあったが、健闘。良馬場替わりならさらなる前進が見込める。

ヴーレヴー(8着)

道中はやや窮屈な位置取り。スムーズならもっと上に来れた可能性もある。体重の増加から成長途上にある印象で、次走注目。

ブラウンラチェット(9着)

外を回る形で脚を使わされるも、ジリジリと伸びていた。馬体重大幅増は好材料。叩き2戦目での上昇に期待したい。

ショウナンザナドゥ(10着)

道中は先行集団にいたが、直線で失速。前目で粘れなかったことから、ややスタミナに課題。良馬場での巻き返しに注目。

これらの馬たちは、展開や馬場状態、位置取りによってはもっと上位を狙える能力を持っている。着順だけで評価を落とすのは早計だ。

惨敗組の中に光る素材:大敗もポテンシャルは健在

着順こそ二桁に沈んだ馬たちにも、敗因がはっきりしている馬が多く、次走での巻き返しが期待できる馬も少なくない。

特に注目したいのが、17着に沈んだミストレス。今回はスタート後すぐに行き脚がつかず、先行争いに加われなかったことが最大の敗因。さらに3~4コーナーで馬群に包まれ、進路を確保できずに終了という不完全燃焼の内容だった。

それでも直線で一瞬だけ見せた反応には光るものがあり、スムーズな競馬ができれば巻き返しは可能だ。前走までは安定感を見せていた馬であり、次走条件次第では狙い目となりうる存在。

また、18着トワイライトシティも重馬場を嫌った印象。馬場が軽い時に改めて見直したい。

騎手・陣営の戦略と展開の読み:勝負を分けたタクティクス

今回の桜花賞は、騎手の判断と展開の読みが勝敗を大きく左右した一戦だった。稍重の馬場、そして前半から淀みないペースで進んだことにより、ポジション取りやコーナーワークが極めて重要なファクターとなった。

まず勝ち馬エンブロイダリーに騎乗したJ.モレイラ騎手は、その冷静かつ的確な判断で勝利を手繰り寄せた。スタート直後のポジション取りはやや後方だったが、無理に押し上げることなく馬のリズムを最優先。3コーナーでやや内側に斜行してしまったものの、その後の進路取りと追い出しのタイミングは完璧だった。

一方で、アルマヴェローチェの岩田望来騎手も好騎乗を見せた。直線では馬群の間を割るように進路を切り開き、惜しくも勝ち馬に交わされたが、見事なレース運びだったと言える。

対照的に、先行して粘り切れなかったエリカエクスプレスの戸崎圭太騎手は、馬場と展開の見極めが難しかったことが仇となった形だ。馬の適性や今後の成長を考えれば、決して悲観すべき内容ではないが、戦術面での反省材料が残ったのも事実。

また、末脚に賭けたリンクスティップのミルコ・デムーロ騎手も、完璧なタイミングで追い出しを仕掛けていた。位置取りの関係で上位2頭には及ばなかったが、戦術的な読みは非常に鋭かった。

各騎手の判断と陣営の仕上げの妙が随所に見られた今回の桜花賞。勝ち負け以上に、それぞれの戦略が明暗を分けた印象が強い一戦だった。

馬場状態の影響:稍重馬場が与えたレースへの影響

この桜花賞を語る上で無視できないのが、「馬場状態」の影響だ。前日から降り続いた雨により、阪神芝コースは稍重に悪化。見た目以上にタフな馬場となり、時計もそれなりに掛かるコンディションだった。

レース全体のラップタイムを見ると、前半800mが46.6秒とやや速めに流れたが、それでも後半の加速ラップ(11.7 – 11.4 – 11.4)が示す通り、伸び脚のある馬には有利な状況だった。特に外差しが効きやすくなっていたため、中~外枠から差してくる馬が好成績を収める結果となった。

このような馬場では、当然ながらパワー型・スタミナ型の血統を持つ馬が浮上しやすく、逆に軽い走りを武器とするディープ系の馬などは伸びを欠く傾向にある。実際、ディープ系産駒の出走馬は今回は上位に顔を出せなかった。

特に印象的だったのは、ノーザンファーム生産馬の馬場適応力の高さ。1着エンブロイダリーをはじめ、2着アルマヴェローチェ、3着リンクスティップと、いずれも馬場を苦にせずパフォーマンスを発揮した。

このように、道悪適性と馬場対応力が大きなカギを握った本レースは、クラシック戦線において「馬場への適応力」も一つの重要なファクターであることを再認識させられる内容だった。

血統傾向分析:活躍馬に共通する配合背景

桜花賞という舞台においては、例年「切れ味」と「立ち回り」の両立が求められるが、今年の馬場状態を鑑みると、「パワー型の中距離血統」が台頭する形となった。

まず注目すべきは、勝ち馬エンブロイダリーの父・アドマイヤマーズ。母父にロベルト系を持ち、早い時期から完成度が高く、馬場を問わず走れる万能型の産駒が多い。エンブロイダリー自身もその特性を色濃く受け継ぎ、今回の稍重馬場でもまったく苦にする様子は見られなかった。

2着馬アルマヴェローチェも、父にロードカナロアを持つ中距離型のスピード馬。母系に欧州的なスタミナを内包しており、馬場や距離に左右されにくい構成が光った。

また、3着のリンクスティップも、キングカメハメハ系の血を引くパワー型の血統であり、こちらも道悪の中でも力を発揮できる馬体構成だった。

逆に、軽さとキレを武器とするディープ系やハーツクライ系などの馬は、馬場を考慮して控えた騎乗を余儀なくされるなど、持ち味を出し切れなかった感がある。

このように、今年の桜花賞では「万能型+パワー型血統」が台頭。今後の牝馬クラシック路線においても、この系統の馬には引き続き注目したいところだ。

クラシック戦線展望:オークスを見据える陣営の思惑

今回の桜花賞で好走した馬たちは、当然ながら次走に控える牝馬二冠目「オークス(東京芝2400m)」に向けての視界が広がった。特にエンブロイダリー、アルマヴェローチェ、リンクスティップの上位3頭にとっては、距離適性と成長力がカギとなる。

エンブロイダリーは、中距離にも対応できる血統とレースセンスの持ち主。東京芝2400mという長丁場でも、自身のリズムを崩さずに運べるタイプで、距離延長も歓迎材料となるだろう。

アルマヴェローチェも、馬体増と安定した競馬内容から、スタミナ面には太鼓判が押せるタイプ。広い東京コースはむしろこの馬の良さをさらに引き出す可能性があり、オークスでも主役級の存在になるだろう。

また、3着のリンクスティップは、後方一気の末脚が最大の武器。オークスではさらに後方勢に有利な展開となりやすいため、巻き返しや逆転の可能性も十分に秘めている。

今後はトライアルレースの結果を見つつ、各陣営がどのようなローテーションを選ぶのかにも注目したい。

総評:雨の女王決戦は、春の新女王誕生で幕を閉じた

今年の桜花賞は、雨という不確定要素の中で繰り広げられた一戦となった。馬場、展開、位置取り、騎手の判断——あらゆる要素が複雑に絡み合い、その中で勝利を収めたエンブロイダリーはまさに新女王にふさわしい存在だった。

差し優勢の展開の中、後方勢が台頭したことで、今後の牝馬クラシック戦線は混戦模様に。各馬の能力は僅差で、今後も展開や馬場の違いで勢力図は流動的となりそうだ。

それだけに、今回のレース内容をしっかりと振り返り、馬の本質を見抜く力が問われる一戦だった。

次走の狙い馬:ヴーレヴー(8着)

今回の桜花賞で最も注目したいのが、8着に入線したヴーレヴーだ。

位置取りは中団の内目、比較的良いポジションで運べていたが、直線ではやや外に出すタイミングを逃し、狭い馬群の中で脚を余す形となってしまった。それでも、最後までしっかりと伸びており、着差以上に内容の濃いレースだった。

また、馬体重+6kgと成長を見せており、馬の雰囲気も上昇中。血統的にも母系に欧州的なスタミナ血統を持ち、東京芝2400mでの巻き返しが大いに期待される。馬場が良くなれば更にパフォーマンスアップが見込め、展開ひとつで上位進出は確実だ。

次走は条件さえ整えば「3着以内」確実の存在と見て良いだろう。

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