レース総評:イミグラントソングが見せた”一段上の瞬発力”
2025年4月12日、中山芝1600mで行われた第43回ニュージーランドトロフィー(GⅡ)は、3歳馬たちによる春のマイル戦線の重要な一戦として注目されていた。結果は、2番人気のイミグラントソング(牡3・辻哲英厩舎)が、1番人気アドマイヤズームとの激しい追い比べをクビ差で制して勝利。その末脚はまさに”別格”のひと言だった。
勝ち馬分析:イミグラントソング――強烈なギアチェンジで完勝
石川裕紀人騎手とのコンビで挑んだイミグラントソングは、中団やや後ろのポジションからレースを進め、3コーナー以降で一気に加速。ラスト3Fは33.1秒という切れ味で、アドマイヤズームをクビ差で差し切った。
この馬はこれで通算4戦3勝。父マクフィ譲りの瞬発力と、母エルノルテの血に流れる持続力の融合で、まさに芝マイル向きの好素材。馬体重も前走から-4kgと絞れており、状態の良さも勝因のひとつだ。
特筆すべきは、「10-9-9」の位置取り。外差しが決まりづらい中山外回りで、無理なく外からスムーズに進出できたのは石川騎手の好判断。今後のGⅠマイル路線でも期待が持てる。
2着馬:アドマイヤズーム――堂々の競馬も、わずかに届かず
1番人気のアドマイヤズームは、好位からの競馬で持ち味を発揮したが、最後はクビ差届かずの2着。川田将雅騎手の手綱も冴えており、4コーナーから直線で早めに抜け出す強気の騎乗だった。
前走の内容からも、先行して長く脚を使うタイプであることは明白で、今回のペースも彼には理想的。ただ、勝ち馬の切れ味がそれを上回ったという印象だ。上がりタイムは33.9秒と優秀。全体のペースが速かった中でもバテずに走り切った点は評価できる。
馬体重が+8kgと増えていたが、太め感はなく、成長分と見ていい。次走以降の巻き返しに要注目。
3着馬:コートアリシアン――牝馬ながらの善戦は賞賛に値する
5番人気ながら、3着に食い込んだのがコートアリシアン。牝馬でありながら牡馬勢相手に互角以上の競馬を見せた点は大きな評価ポイントだ。
菅原明良騎手とのコンビで中団内目を追走し、直線では馬群を割って伸びてきた。上がりタイムは33.8秒と上位3頭の中で2番目の速さ。決してスムーズとは言えない位置取りからでも、しっかり脚を使えたのは、この馬の地力の高さだろう。
馬体重は-6kgと絞れていたが、パドックでは張りのある仕上がりで気配も良かった。牝馬クラシック戦線を狙うなら、1400〜1600mの舞台がベストか。
4着:プリティディーヴァ――鋭く伸びたが届かずの悔しい一戦
3番人気で4着に敗れたプリティディーヴァは、好位から折り合いをつけ、直線でもしっかりと脚を使っている。ただ、最後は差し比べの中でやや決め手に欠けた印象。
ジョアン・モレイラ騎手の騎乗も丁寧で、ポジション取りや仕掛けのタイミングに大きなミスはない。それでもわずかに届かなかったのは、勝ち馬たちとの瞬発力の差と言えるだろう。
馬体重は-10kgと大きく減っていたが、細くは見せず、むしろすっきりした印象。次走以降で馬体が戻ってくるようなら、さらに上積みが期待できる一頭だ。
5着:ミーントゥビー――後方からの追い込みで存在感を示す
12番人気と低評価だったミーントゥビーが5着と健闘。スタートから後方のインで脚を溜め、直線で馬群を捌いて伸びた脚は見所たっぷりだった。
松岡正海騎手が無理に動かず、馬のリズムを優先した乗り方も好感。上がりタイムは33.7秒と上位馬と遜色ない。力の要る馬場でもしっかりと脚を使える点は、今後の重賞戦線でも武器になるはずだ。
430kg台と小柄な牝馬だが、軽さを活かした走りで今回の好走はフロックではないと感じさせた。
6着:ストレイトトーカー――早め先頭から粘るも、ラスト一押し足りず
8番人気のストレイトトーカーは、スタート直後から3番手の好位を確保し、4コーナーでは先頭集団に並ぶ競馬。大野拓弥騎手が果敢に動いて勝ちに行ったレース運びだったが、ゴール前で脚が鈍り、6着に敗れた。
この馬の特性はやはり「先行力」と「持続型の脚」で、34.8秒の上がりからも分かる通り、一瞬のキレでは勝ち馬に及ばなかった。ただ、決して崩れておらず、展開ひとつで上位争い可能なだけの力は見せている。
馬体重は-6kgと絞れており、体調面に問題は見られなかった。タフな馬場やペースが落ち着くような展開になれば、今後も積極的な逃げ・先行策で台頭する可能性を秘めている。
7着:ルージュラナキラ――理想的なポジションも、最後は伸びを欠く
4番人気のルージュラナキラは、スタートから2番手で競馬を進め、逃げ馬をマークする形で展開。岩田康誠騎手の老練な手綱さばきで、理想的なポジションをキープしていたものの、直線で追い出されてからの反応がやや鈍かった。
上がりは34.9秒と、上位馬に比べると遅く、この馬の持ち味である粘り込みが発揮できなかった。ペースが速かったことで、先行馬には厳しい展開となったことが響いた形だ。
468kgと馬体重の変動はなし。仕上がり自体は悪くなく、むしろ安定して走れる体つき。今回の結果は展開に泣かされた印象が強く、次走でスローな流れになれば十分巻き返しは可能だ。
8着:ジェットマグナム――馬群で脚を余した印象の一戦
9番人気のジェットマグナムは、終始中団からの競馬。好位の内側でロスなく立ち回ったものの、直線では前が壁になる場面もあり、スムーズに追い出せなかった。
三浦皇成騎手の冷静なレース運びは評価できるが、やや仕掛けが遅れたことで、持ち味である末脚が十分に発揮できなかった。上がりタイムは34.6秒と悪くはなく、力負けというよりは「運のない競馬」だったと言える。
馬体重も+2kgと安定しており、状態に問題はない。次走で外目の枠を引いて、スムーズに加速できる展開ならば上位進出は可能。
9着:ルナルーチェ――序盤から前付けするも、最後は一杯に
7番人気で期待されたルナルーチェは、前半から好位に取り付き4番手を追走。しかし直線では早々に脚が鈍り、9着に終わった。
ブリンカー着用で気合い乗りは良く見えたが、前半で力んだ走りになってしまい、結果的に末脚に影響した可能性が高い。上がりタイムは34.8秒で、上位陣との差を埋めるには至らなかった。
416kgという小柄な牝馬で、馬体重も-8kgと減っており、やや調整が難しかったかもしれない。スムーズな流れの中で自分のリズムを刻めれば、巻き返しの余地はある。
10着以下の馬たち:次への試金石に
- シュバルツマサムネ(10着)
後方から差を詰めたが位置取りが厳しかった。終いは33.9秒と脚は使っており、展開次第でチャンスあり。 - チョングク(11着)
最後方から追い込みに賭けたが、ペースが向かなかった。潜在能力は秘めるだけに条件次第。 - ムイ(12着)
直線では外から差すも脚色が同じ。やや芝よりもダート向きかもしれない印象。 - マルチアタラシイカドデニ(13着)
馬群の後方で動き切れず。大跳びなフォームから、広いコース向き。 - ベイビーキッス(14着)
果敢に逃げるも、ペースが速く最後は失速。軽快なスピードは魅力で、1200〜1400mなら見直せる。
次走の狙い馬:ミーントゥビー(5着)
次走で「3着以内が見込まれる」馬として推奨したいのが、5着に健闘したミーントゥビーだ。
このレースでは12番人気と低評価ながらも、直線で馬群を捌いて鋭い脚を見せた。33.7秒の上がりは全体で上位に入るもので、展開に左右されながらも地力のあることを証明した。
小柄な牝馬ではあるが、脚の回転が速く、瞬発力勝負にも対応可能。前走での好走がフロックではないことは明白で、条件戦に回ればさらに上位が狙えるはず。特に東京や新潟といった直線の長いコースでの適性が高く、次走で外枠から差しに回る競馬ができれば、馬券圏内は濃厚と見ている。
COMMENT みんなのコメント欄