レース総括:速い時計、差しの決着に群がる注目馬たち
2025年4月5日(土)、阪神競馬場で行われた第34回チャーチルダウンズカップ(GⅢ・芝1600m)。良馬場のもとで行われたこの一戦は、NHKマイルCのトライアルレースという性格を持ち、3着以内に本番の優先出走権が与えられる大事な一戦。3歳の有力馬たちが集結したその舞台で、勝利を手にしたのはランスオブカオス(牡3)だった。
レースタイムは1分32秒2という高速決着。道中は中団前目で運び、直線で外に持ち出されると一気に脚を伸ばし、ライバルたちを力強く差し切る勝利劇だった。
ランスオブカオス:圧巻の瞬発力で3歳マイル戦線の主役へ
中団追走からの強烈な差し脚
ランスオブカオスは中団のポジションから冷静にレースを進め、最後の直線では前が開いた瞬間に鋭い末脚を発揮。上がり3ハロンは33.9秒と、この日の芝の速さを考慮しても抜群の伸び脚。鞍上の吉村誠之助騎手が見事なタイミングで仕掛け、直線の勝負所での判断も秀逸だった。
血統背景と今後の可能性
父は近年の種牡馬ランキングでも注目株のシルバーステート。母はハイドランという地味な血統背景ながら、シルバーステート譲りのスピード能力を証明する走りだった。馬体重も**496kg(-2)**と、絞れてきたことが好走要因の一つと考えられる。今後、NHKマイルCへ向けて本格的にローテーションを組む可能性が高く、ここでの勝利は大きな弾みになるだろう。
アルテヴェローチェ:1番人気の責任を果たすも、勝ち馬に屈す
展開読みと位置取りの妙
1番人気に支持されたアルテヴェローチェは、後方からの競馬。スタート直後は無理せず控え、道中は8番手追走から上がり3F 34.1秒で追い込みを試みた。しかしながら、勝ち馬ランスオブカオスと同じような位置取りからの競馬となり、0.3秒差の2着という悔しい内容。直線の伸びは悪くなかったが、位置取りの差がそのまま着差に表れた印象だ。
次走に向けた展望
敗れはしたが、前走の内容からも高いポテンシャルを秘めていることに変わりはない。須貝尚介厩舎の管理馬であり、今後も重賞戦線での活躍が期待される。むしろここで敗れたことによって過剰人気から外れる可能性があり、馬券的には次走が狙い目となるかもしれない。
ミニトランザット:末脚炸裂の3着激走、斜行の戒告も影響か
人気薄での好走、その理由は?
8番人気と評価を落としていたミニトランザットだったが、上がり3ハロン33.7秒というメンバー中最速の脚を使って3着に飛び込んだ。後方9番手から外を回すロスある競馬ながら、ラストは良く伸びた。結果的にアルテヴェローチェとの間にはわずかな差しかなく、位置取りと斜行がなければ2着も狙えた内容。
斜行による騎手戒告が示すレースの激しさ
直線での追い出しの際に外に斜行しており、騎手の鮫島克駿は戒告処分を受けている。被害馬は4番・2番であり、スムーズな競馬ができていれば着順に影響を与えていた可能性も。とはいえ、馬の素質としては重賞級のスピードと瞬発力があることは証明済み。次走の条件次第では大穴候補となる可能性が高い。
スリールミニョン:牝馬ながら好内容、展開ひとつで馬券圏内も
牝馬ながら牡馬相手に堂々の4着
注目すべきは、4着に入線した牝馬スリールミニョン。斤量55kgを背負いながらも、牡馬相手に0.4秒差という僅差の好走。道中は5番手で折り合いをつけ、最後の直線も粘り強く走った。440kgという小柄な馬体ながら+6kgと成長を見せた点も好印象。
マイルへの適性と今後の可能性
牝馬限定戦では明らかに上位の力がありそうな走り。今後は桜花賞を回避してNHKマイルCへ直行の可能性もある。また、馬場が渋っても対応できるタイプであり、雨天のレースになれば一気に人気以上の着順が見込める。
モンテシート:前で運ぶも脚が続かず、展開の壁に泣く
好位からの押し切り失敗
スタート良く、2番手追走の形を取ったモンテシート。しかし、直線では伸びを欠いて5着。持ち味の先行力は見せたが、上がりが速くなったことで最後まで踏ん張れなかった。ラップタイムからも分かるように、中盤で息を入れることができないペースだったことが影響したか。
敗因と次走への巻き返し要素
今回は流れが厳しかったものの、展開次第では再度粘りこみ可能な先行型。前走の内容から、逃げ・先行馬が有利な舞台であれば一変も期待できる。現状では人気と実力が乖離している可能性があり、人気が落ちた次走が大きな狙い目になるかもしれない。
アスクセクシーモア:好位からの競馬も、見せ場十分の6着
3コーナーから早め進出、脚を使い切った形に
アスクセクシーモアは5番手から3番手に進出する積極策。展開としては前に厳しい流れとなったが、最後までしぶとく脚を使いクビ差の6着。上位陣との差は0.5秒以内であり、着順以上に中身の濃い競馬をしている。上がり3Fは34.5秒と、馬場を考えれば十分な時計。
馬体減が示す調整過程の難しさ
今回の馬体重は前走比マイナス8kgの476kg。やや絞りすぎた印象もあり、力を出し切るにはコンディション面で万全ではなかった可能性が高い。調整ひとつで着順が変わるレベルの馬であり、次走で馬体回復していれば巻き返し濃厚だ。
ジーティーマン:末脚は光るも展開に泣く、上がり33秒台も届かず
位置取りの差が明暗を分けた
ジーティーマンは最後方からの競馬。直線では外に持ち出し、末脚勝負に徹したが、届いたのは7着まで。とはいえ、上がり3Fは33.8秒と鋭さを見せており、展開が噛み合えば十分に巻き返し可能な内容だった。
成長余地と次走の可能性
馬体重はプラス6kgの494kgと馬体は充実してきており、今後の成長にも期待できる1頭。騎手の北村友一のコメントにも「脚は使っているが、どうしても展開に左右される」とあったように、ペースが流れるレースや直線が長い舞台で一変の可能性あり。
ワンモアスマイル:初ブリンカー着用も効果限定的、馬群を割れず失速
気性面の不安にテコ入れも実らず
今回初めてブリンカーを着用してきたワンモアスマイルだったが、その効果は限定的。10番手から外目を回すも、直線では大外に持ち出すロスが響き、伸びを欠いた。上がりタイムは34.4秒とそこまで悪くなかったが、見せ場は少なく、8着まで。
立て直しには時間が必要か
この馬は気性の成長が鍵となっており、ワンターンのマイル戦よりもコーナーが多く、流れの緩急がある中距離戦の方が合っている可能性がある。一度条件戦に戻して立て直しを図ることで、本来の末脚を発揮できるタイプだ。
ツーエムクロノス:果敢な逃げも見せ場はここまで、厳しいレースに屈す
レースを引っ張るも消耗戦に巻き込まれる
最内枠から果敢にハナを主張し、前半600mを34.4秒という速いペースで通過。押し切りを狙う構えだったが、後続のプレッシャーも強く、直線半ばで脚色が鈍る。結果は9着だが、内容的には逃げた馬にとっては厳しい流れであり、参考外と捉えていい一戦。
条件次第で巻き返し可能
今回は「逃げ馬に不利な流れ」だったが、スローで逃げられる展開になれば一変可能。馬体も504kgと立派で、能力そのものに陰りはない。次走、人気を落とすようなら積極的に狙いたい穴馬候補になるだろう。
モンタルチーノ&フォルテム:道中のポジションが裏目、直線で沈む
好位から伸びず、底力に課題を残すモンタルチーノ
モンタルチーノは中団前目で運んだが、直線では他馬に脚色で劣り10着に敗退。上がりも35.3秒と平凡で、決め手を欠いた印象。前走時よりも馬体重が4kg減っており、仕上がり途上だった可能性が高い。
フォルテムは先行勢に飲まれ、見せ場なし
フォルテムも3コーナーで3番手につける積極策だったが、最後はバテてしまい最下位の11着。馬体重も減っており、調整不足と展開の厳しさが重なった結果と考えられる。今後は条件戦での立て直しが急務だ。
ミニトランザット
人気落ち+展開次第で一発あり!「斜行さえなければ2着も」だった実力馬
次走、ぜひ狙いたいのはミニトランザットだ。今回、8番人気という低評価を覆し3着に好走した点を見逃してはならない。特筆すべきはメンバー中最速の上がり33.7秒を記録しながら、直線での斜行がなければ更に上の着順も狙えた可能性があったということ。
騎手の戒告を受けたが、それはすなわち馬が持っていた脚がどれほど鋭かったかの証でもある。位置取りも悪くなかったうえに、最後の伸びは鋭く、道中の立ち回り次第でGⅡレベルでも馬券圏内の力がある。
次走では前走の3着という実績からやや人気になるかもしれないが、前回の斜行が着順を底上げしていると判断され、意外と評価が上がりすぎない可能性がある。オッズ妙味と実力がマッチする「馬券的お宝」として、ぜひ注目したい。
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